前回の「治験ボランティアの声002」では、花粉症小児治験に参加した親子に話を聞いた。続いて、今回は新型コロナウイルス感染症の国産ワクチンの小児治験に参加した親子にインタビューをした。花粉症の治験と比べると、来院回数や調査日誌の内容など、異なる点は多い。参加するうえで不安だった点などについて聞いた。


漠然とした不安があったワクチン治験。
正しい情報が参加の後押しに。


治験に参加したきっかけを教えてください。

Yさん母:私が治験を知ったのは、友だちが治験ボランティアをしていたことがきっかけです。そこで「私もやってみようかな」と思い、ボランティア登録をしました。その後、家族で団らんをしているときに、インクロムさんの治験募集一覧を眺めながら「いろいろな種類があるよ。子ども向けの治験もあるみたい」と何気なく話したんです。すると、娘が「参加してみたい」と言い出しまして……。まさか興味をもつとは思っていなかったので、ちょっと慌てました(笑)。

Yさん:やってみたいと思った理由は、正直言うと、負担軽減費が受け取れるからです。私は中学生なので、まだアルバイトができません。自分が使うお金を、自分で用意できることに惹かれて、「参加したい」と言いました。

Sくん母:子どもが治験に参加するのは、今回で2回目です。初めて参加したのはこの子の妹で、花粉症の治験でした。そのときは、私が普段から服用している花粉症薬の小児用新薬を開発する治験と聞いて、参加を決めました。1回目の治験の感想は、「思ったより気軽に参加できたな」です。もっと複雑でストレスのかかるものだと気構えていたので、つつがなく終了して一安心しました。それで、「また参加しても良いかも……」と思っていたときに今回の募集を知り、興味をもった次第です。子どもに聞いてみると、「やってみたい」と言ったので、応募することにしました。

Sくん:妹が治験に参加している間、家で服薬する様子を見守ったり、病院に付き添ったりしていました。医療の世界に興味があることもあって、ずっとおもしろそうだと思っていて。自分も参加できるなら、やってみたいと思いました。


治験開始前に抱いていた不安について教えてください。

Yさん母:自分で参加したいと思って登録した治験ボランティアですが、子どもとなると話は変わります。参加を望む娘の意思は尊重したいものの、「本当に安全だろうか」という不安があり、かなり悩みました。さらに、相談した知人に心配されたことから、一旦は参加しないことに決めました。
でも、それから1週間ほどして、娘から「やっぱり参加したい」と相談されまして……。そこまで言うならと、私なりに調べて勉強することにしました。今回の治験はウイルスの毒性をなくした不活化ワクチンを使うことや、それゆえ体内でウイルスが増殖するわけではないことなど、たくさん情報を集めました。そして、それらを検討していろいろ考えたうえで、結局、参加を決めました。「他人に心配された、という理由で参加をやめて良かったのかな」という気持ちがあったので、自分で考えて決断できたことは良かったと思います。

Sくん母:子どもが治験参加するのは2回目ということもあり、私はそこまで大きな不安はありませんでした。しいて挙げるなら、副反応については少し心配しました。数年前、私自身がコロナワクチンを接種したときは、発熱するような重い副反応がありました。なので、そんなワクチンを子どもに打たせて大丈夫だろうか、と思いまして。
ただ、説明を聞いたところ、今回のワクチンは、私が接種したmRNAワクチンではなく、副反応が比較的軽度な不活化ワクチンであるとのこと。その他、詳細な情報を確認することで、心配は解消できました。



副反応が見られず、まずは安堵。
苦労していることは「特にないかも……」。


初めて来院したときのことを教えてください。

Yさん母:「副反応が出たらどうしよう」という不安もあって、私は少し緊張していました。娘はそんなに気負っていなかったようですね。注射が痛くて驚いたそうですが、負担軽減費を思って乗り越えたそうです。

Yさん:あまり緊張しませんでした。思ったより注射が痛くて少しびっくりしましたが、全然がまんできる程度。それ以後は副反応もなくて良かったです。

Sくん母:2回目の参加ですから、特に驚くようなことはなかったですね。子どもも、妹の治験に付き添って通院していたので、慣れた様子でした。本を読むことが好きな子なので、説明会で配られた子ども用の治験説明書と大人用の治験説明書を読み込んで、納得したり感心したりしていました。

Sくん:妹の治験は大阪治験病院だったので、OCROMクリニックに来るのは初めて。待合室に読みたい本がたくさんあって良かったです。緊張するようなことは特になかったです。


治験が始まってから、苦労したことや困ったことを教えてください。

Yさん母:そうですね……。心配していた副反応もなく、本人も元気そのものですから、今のところ困るようなことは起こっていません。

Yさん:特にないです。

Sくん母:私も、困ったことは特にありません。下の子が受けた花粉症の治験では、毎日家庭で治験薬を服薬させたり、くしゃみの回数を数えて報告したりと、日課がいろいろあったのですが、今回はそのような忙しさもなくて……。「ずいぶん楽だな」と感じています。アプリを使って健康状態を報告する義務はあるのですが、週に1回「変わりなし」と報告するだけですし。

Sくん:注射は痛くなかったし、副反応もなかったし、困ったことはないです。



治験は、新しい世界を知る機会。
異なる治験への参加も、前向きに検討したい。


治験の終了はまだ先ですが、参加した感想を教えてください。

Yさん母:参加する前はいろいろ悩んだのですが、今のところは順調に治験が進んでおり、ほっとしています。もちろん、100%副反応がないとは言いきれないと思うので、今後も注意深く様子を見守っていきたいと思います。私としては、前から興味があった治験の世界を知ることができて良かったです。事前の説明動画で「治験とは何か」というお話や、「治験はアルバイトではない」というお話を聞いて、とても勉強になりました。総じて、「参加して良かった」というのが、今の気持ちです。

Yさん:最初は負担軽減費に惹かれていましたが、病院の方々やお母さんから説明をしてもらって、治験にはメリットもデメリットもあることを知りました。副反応などは少し心配かもと思いましたが、それでもやってみたいと思って、今回参加させてもらいました。今のところ副反応はないし、負担軽減費が受け取れたので、やっぱり参加して良かったです。

Sくん母:先ほど申し上げた通り、花粉症の治験に比べると、今回の治験は「手間がかからない治験」という印象です。家庭でのタスクが少なく、来院数も少なくて、参加しやすい治験だと思いました。今のところ息子も変わりなく元気ですし、参加して良かったと思っています。

Sくん:なかなかできない経験ができたので、参加できて良かったです。来院すると休日の半分が潰れることも、待合室でゆっくり本が読めるので、個人的には問題ないです。


今後、治験に参加したいと思いますか。

Yさん母:私に参加できる治験があれば、ぜひ参加してみたいです。娘の治験については、内容を確認して検討したいです。本人はかなり前向きなので、私の方で冷静に吟味したいと思います(笑)。

Yさん:参加したいです!今の治験が終了して、休薬期間が過ぎたら、お母さんに相談して参加できる治験を探したいです。

Sくん母:子どもが2人とも治験に参加したので、今度は私が参加したいです。私にとっての治験は、新しい知識や知らない世界と出会える機会です。子どもたちのおかげで花粉症とワクチンの治験を疑似体験することができたので、次は全然違う治験の現場を見てみたいですね。子どもが小さいので今は難しいかもしれませんが、宿泊型の治験にも興味があります。

Sくん:今回、治験に参加しておもしろかったので、また参加しても良いかなと思っています。できれば、OCROMクリニックのように、待合室にいろいろな本が揃っている病院に通いたいです。


(公開日:2025年 7月 22日)